Social Care Design

「私たちは常に“ひと”を観て、そして明日をカタチにします」

BLOG

2014.07.16

「福祉・医療・教育の視点を企業・地域へ活かす」


”care”に関わる専門職や実践家、研究者など、それぞれの活動や実践、気になる話題を持ち寄って、多様な価値や専門性から相互にフィードバックを行う、ゆるーい「場」として開催されている「ソーシャル・ケア・カフェ」の2回目が、2014年6月27日、開催され、約10名の医療、福祉、保育、教育、経営者、デザイナー、マーケティングプランナー、経営コンサルタントがそれぞれの専門性を切り口に、ソーシャルワークの本来的意義や価値について対話を行いました。

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今回のテーマは、
「What is Social Work?
-ソーシャルワークを見つめ直し、新しいソーシャルワーク観を語ろう!」

話題提供は、
ソーシャルワーカー/Social Change Agency 代表/OVA(オーヴァ)理事を務める、横山北斗さん
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[講師プロフィール]
1984年群馬県生まれ。東海大学工学部航空宇宙学科自主退学。神奈川県立保健福祉大学保健福祉学部社会福祉学科卒。現役のソーシャルワーカーとして医療機関に勤務しながら、Social Change Agencyを立ち上げ、ソーシャルワーカーの認知度向上、コミュニティ形成などに取り組んでいる。

多義的に、そして、それぞれの主観的なイメージによって捉えられることの多いソーシャルワーク。今回は、ソーシャルワークの歴史や国際的定義を糸口に、ソーシャルワーク実践を行う専門職にとっては省察の機会、周辺領域の専門職にとってはソーシャルワークと各自の専門性の関係性の発見、そして、一見無関係と思われる専門職にとっては新たな気づきを提供することとともに、参加者それぞれの持つ専門性についての対話を通じて、ソーシャルワークの根底にある価値の共有と新しいソーシャルワーク観を考えるヒントを参加者が得ることが一つの目的でした。

横山さんの資料はこちら↓
http://www.slideshare.net/yokoyamahokuto/627-36383580

最初に横山さんから参加者のみなさんへ
「ソーシャルワークって、ソーシャルワーカーって何ですか?」との問い。

(回答者の声 ※抜粋)
”車いすを押しているイメージ(デザインリサーチャー)”

”ボランティアのイメージがある、医療的なイメージ、机に座って言葉でサポート、カウンセラーっぽい、医療や保険ノウハウを持っている(会社社長)”

”走り回っている、社会や自分の注目している分野で走り回っている(大学院生)”

”専門性(知識)が高い(介護士)”

”何かと何かをつなげるかけはし(発達障害支援、社会福祉士)”

”つなぐ人、細分化された専門性(保育士)”

”コーディネーター、でもどこにソーシャルワーカーが見えないのも事実(介護人材育成会社社長)”

参加者それぞれの経験などにより、ソーシャルワークやソーシャルワーカーに対する印象は異なり、介護とイコールで考えられる傾向もあるなど、ソーシャルワークやソーシャルワーカーに対する認識が多義的に捉えられていることが確認されました。

続いて、横山さんからソーシャルワークの国際的な定義(国際ソーシャルワーカー連盟)が紹介されました。

「ソーシャルワーク専門職は、人間の福利(ウエルビーング)の増進を目指して、社会の変革を進め、人間関係における問題解決を図り、人びとのエンパワーメントと解放を促していく。ソーシャルワークは、人間の行動と社会システムに関する理論を利用して、人びとがその環境と相互に影響し合う接点に介入する。人権と社会正義の原理は、ソーシャルワークの拠り所とする基盤である。」

※2014年7月には改訂され下記のようになるそうです。

「ソーシャルワークは、社会変革と社会開発、社会的結束、および人々のエンパワメントと解放を促進する、実践に基づいた専門職であり学問である。社会正義、人権、集団的責任、および多様性尊重の諸原理は、ソーシャルワークの中核をなす。ソーシャルワークの理論、社会科学、人文学、および地域・民族固有の知を基盤として、ソーシャルワークは、生活課題に取り組みウェルビーイングを高めるよう、人々やさまざまな構造に働きかける。」

ここで大事になるキーワードとして横山さんは、

社会変革と社会開発、社会的結束、エンパワメントと解放、社会正義、人権、集団的責任、多様性尊重、生活課題・ウェルビーイングを上げ、ソーシャルワークを考えるうえで、人・環境・社会(システム)という視点が重要であるといいます。

そのうえで、
「あなたが有する専門性とは、誰のために、何をなすためにあるものですか?」
と、次の問いが発せられました。

(回答)
”デザインを使って、目の前の顧客に喜んでもらうためにエンパワーメントする(デザインリサーチ会社経営者)”

”デザインを使って、社会を良くするために・社会のシステムを良くするために(デザインリサーチャー)”

”人としてどう生きたいかという視点でのキャリア教育、学びをできるように、人生をどう生きるかを考えること(大学院生・キャリア教育)”

”その子の生きやすい環境を作っていくこと(発達支援)”

”子どもたちのために、持っている個性や可能性をどう伸ばしていくのか、一人一人の発達や成長はことなるのでそれぞれに合った関わりをすること。未来の大人を育てること(保育士)”

”専門性はない。けれど、現場で感じた問題意識が、実は現場では当たり前になっていたり、無自覚だったり、現場では言えないことに気づくこと、それを声に出せること。何も知らないから言えることが専門性なのかもしれない(介護人材育成会社経営者)”

最後に、
「みなさんは、自分が有する専門性が社会に対して生み出す価値を最大化するにはどうすればいいと思いますか?」という問いかけがなされました。

ここでは、
それぞれが自己研鑽し、そのうえで、より良い状況を創り出すために異分野、多分野の多様なメンバー間での活発な議論、それぞれの価値観のぶつけ合いを行う場の必要性が共有されました。

最後に、横山さんのソーシャルワーク観について次のように紹介がありました。

『ソーシャルワークの対象は、生活問題を抱えて困っている人だけではない。ソーシャルワークは、全ての人たちの「どう生きるか。どのようして生きていきたいか」という生き方や価値の創造を共に支えるために活用されるべきもの(専門性)』

『目の前にいる”人”の希望や未来を創ることを支えるという仕事は、必然的に、その“人”だけを見ることを許さない。』

『「どう生きるか。どのようして生きていきたいか」という生き方や価値の創造を共に支えるために、その人の周りに目をやり、その人を取り巻く環境も含めて考え、社会での位置づけ、意味を考えながら、自然と行動をするようになるのでは…?』

ソーシャルワークは、福祉現場や医療現場に限定されたものではないように思います。それはそもそもの定義が示す通り、人や家族、組織、地域のエンパワメントを行い、多様な社会資源を適切にコーディネートしていくことが重要だと言えます。そのためには、特定の専門性だけにとらわれるのではなく、多様な専門性について常に向き合い、異なる専門家や支援者のエコシステム=支え合いの共同体を意識的に作りだしていくことが必要なのかもしれません。

話題提供をしていただいた、横山さんからは以下のような感想もいただきました。

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このたびは学び多い機会を頂き、どうもありがとうございました。
私は普段は医療機関でソーシャルワーカーとして働いています。日々、病気や怪我によって生じる生活上の困りごとについて、患者さんやそのご家族から話を伺い、その困りごとが軽減されたり、解決できるようにお手伝いをしています。

今回、「ソーシャルケアカフェ」に参加されたみなさんと、以下3つの問いを共有させていただきました。

・「ソーシャルワークって、ソーシャルワーカーって何ですか?」
  みなさんがもっているイメージを簡単に一言程度で教えてください。

・「あなたが有する専門性とは…誰のために、何を為すためにあるものですか?」

・自分が有する専門性が社会に対して生み出す価値を最大化するにはどうすればいいと思いますか?
 (自分の専門性を…目の前の「人」、「環境」、「社会」に対して最大限活かすにはどう行動しますか?)


この問いの根底には、「ソーシャルワークという概念は、もっと社会全体で共有されるべきものなのではないだろうか?」、「専門職と呼ばれる仕事をする人たちは、これから先の未来において、社会からどのように振る舞うことを求められるのだろうか?」という私個人の問いが存在していました。

みなさんからお答え頂いた言葉を聞く中で、ソーシャルワークの定義は、決して社会福祉の領域だけに留まるものではないということ、そして、職業に限らず、自分のサービスを届ける相手を幸せにすることだったり、世の中を良くしようとすることだったり、そういった行為を為す全ての人たちにとって共有できるものなのだ、と改めて考えることができました。

そしてまた、常々医療現場でソーシャルワーカーとして働く中で考えていた『専門性とは、”付与された概念”と、”自らが依って立つことのできる紡ぎだした言葉”の両方で構成されるもの』という自説について、参加されたみなさんが言葉にされた「専門性」について伺う中で、深く、再考することができました。

社会福祉等の対人援助職の現場においても、ひとりの専門職だけで、多層化する生活課題を抱える人たちを支えきれる時代はもうとうの昔に過ぎ去っています。

であるからこそ、今、そしてこれから、専門職には、”自らの専門性を深め、いつでも発揮できる準備を怠らず、かつ、自らの専門性という価値・技術を他者との間で付与し合うことができる汎化能力の獲得”が求められていくように感じています。

ひとりでできることには限界があります。だからこそ「誰かと一緒にやる」、「仕組みをつくる」ことが大切なのだと、7年間現場で働く中で考えるようになりました。

私は「仕組み」について考えるとき、いつも、手のひらと水のイメージが共にあります。1人の手のひらで掬うことのできる水の量はたかがしれています。だからこそ、一滴でも多く掬えるように、手のひらを重ね、たくさんの手のひらを集わせる必要があるのだと思っています。

「異なるバックグラウンド・専門性を有する人間たちの間で交わされる言葉たちが、これからの未来を創る」

参加者のみなさんの言葉を聞きながら、そんなことを思うと共に、ソーシャルケアデザインのホームページの冒頭にある「私たちは常に”人”を観て、そして明日をカタチにします」という一文が示す価値を実感することのできた「ソーシャルケアカフェ」でした。

トリニティの皆様、須藤様、ご参加くださった皆様、この度は、素晴らしい機会をどうもありがとうございました。

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横山 北斗 Hokuto Yokoyama

ソーシャルワーカー

1984年群馬県生まれ。東海大学工学部航空宇宙学科自主退学。神奈川県立保健福祉大学保健福祉学部社会福祉学科卒。現役のソーシャルワーカーとして医療機関に勤務しながら、Social Change Agencyを立ち上げ、ソーシャルワーカーの認知度向上、コミュニティ形成などに取り組んでいる。